2016年11月アーカイブ

 

どこかで間違えてしまったのかなと、学び方を…。

 

――では個人的に質問です。先生がなぜ心理学の道に進もうと思ったのか聞いてもよろしいでしょうか

 

心理学ね。僕、高校のときは普通科ではなく理数科にいて、理科系に進もうと思っていたのね。

 

――はい。

 

クラスも全員男性で理学部とかそういうところに行って、生物学をやろうと思ってたんだけど、僕の父親が理系で、生物学をやっても食べていけないぞと言われて…。

 

――うはは。

 

それでもっと食べられない分野が心理学だとは思うんだけれども。

 

――うふふ。

 

親は文系をあまり知らなかったので心理学に反対はしなかったので、心理学に進みました。それで人間科学部というのもあって、そういう分野にいきたいなと高校の後半くらいに思って。ただ大学に行ってからも本当に心理学がいいかどうかわからなくて。入ったのが文学部だったので。文学とかもいろいろ読んだりして、そっちも面白いかなと思ったんだけれども。もともと理系だったので数学も不得意ではなく文学にも興味関心があったので、それが両方合わさった形という意味では心理学は合っていた。実験もできるし、ある一方では人間の心理みたいな、ちょうど文系と理系の中間的なところ。動物実験もやったし、供述調書の分析もやったし、そういう両面ができるところが心理学の面白いところかな。だからそういう意味では数学が苦手な人を見ると、もうちょっとできた方がもっと心理学楽しいのになって。

 

――完全に僕ですねそれ。

――私も。

――統計法とかすごい…。

――苦労してた。

 

自然科学的な考え方を身に着けたほうがより楽しめるのかなと。ただ自然科学的な考えだけだと無味乾燥になるので、僕は今言葉に関心があるんだけど、言葉の意味だけじゃなくて、どういう風に人が話すとか、そういう細部に関心を向けると面白いのかな。あとはやっぱり人間がやるいろいろな行動の細かいところとかに関心を持つのが面白いのかなと。細かく見ていくと人間って気づかないうちにいろいろなことをしているので。本人も気づかないようなところに目を向けるっていうのは面白いことだなっていう。ただ動物実験も楽しかったけどね。ネズミの行動を見てるとなんでここで立ち止まるんだとかね。いろいろ考えながら実験したんだけど、それをどうやって記述するかっていうね。そういうのが面白いと思います。

 

――ありがとうございます。

――成功する秘訣…

 

なに?

 

――めちゃめちゃざっくりだな!!!

――先生たちの努力ってわたしたちからすると貴重なお話しだと思うので。その努力を成功させる秘訣を教えていただきたいなと思って。

 

成功したかどうかっていうのはかなり主観的なものだから…。

 

――確かに(笑)

 

絶対的な成功って言ったらあんまり成功してない気がするんだけど。

 

一同:あははは

 

1つは、例えば英語とか考えてみると、みんな嫌いだっていうんだけど、どこかで間違えてしまったのかなと、学び方を。

 

――うんうん。

 

やっぱり楽しまないと覚えられないので、僕も英語は中学高校とそんなに好きではなかった。さっき言った数学とか理科とかそっちの方が好きだったんだけど、入試でどうしてもやらなくちゃいけないので、やるにはやったんだけどあまり楽しくはなかったんだ。大学で文学部に入ったこともあって周りが帰国子女とか英語の出来る人がいてこれはさすがにやばいって思って、大学1年の夏休みに中学1年の英語から自分でやり直してみて、英語圏の子どもが読むような童話を読んでみたり、中学高校の教科書引っ張りだしてきて暗記するとかしてみて。そうすると大学入るとみんな勉強しないから…。

 

――ふふ。

 

1年の後期とか2年くらいになるともう他の人に追いついたし、英語のペーパーバックも読めるようになったし。そうすると自分が知りたい分野のことを英語で読める、あるいは、まだ日本語に翻訳されてない小説を読むと人に自慢できるし、自分でも面白く読める。あるいは、翻訳の文体よりも英語そのままの方が面白いっていうのに気付いて、そうするとやっぱり面白いなっていう。だから心理学でも英語でも楽しむところまでいかないと楽しくないんじゃないかな。

 

――そう…ですね(笑)

 

やっぱりプロのスポーツ選手でも面白いからプロに行ったところがあると思うんだよね。

 

――うんうん。

 

イチローとか。やっぱり野球が面白いんだと思うんだよね。そういう意味では、せっかく心理学やるなら心理学を面白く楽しむ、学ぶってことを楽しまないとそれがなかなか持続しないのかなって。面白ければ結構持続するんじゃないかな。

 

――確かに。

 

そんな感じがするんだけどね。だからそういう意味で英語は楽しくないんじゃないかなってね。できないと。

 

――あ、でも…楽しくないです。

 

うん、だからどこかで間違っちゃったんじゃないかなと思ってね。あるいは中学高校の勉強で楽しくないっていうのはどっかで間違えちゃったんだろうね。他の教科は楽しめるとこまでいけたので、それほど受験勉強とかすることは苦痛じゃない。っていうのは楽しいから。だから勉強があまり楽しくない人は、楽しくすると意外と楽かもしれない。たぶん就職して仕事しててもそうだと思う。その仕事が楽しいかどうかでだいぶ違うんじゃないかな。

 

――楽しみを見つけるってことですね。

 

そうそう。だから人によっては接客とか楽しいっていう人もいるんだろうし、あるいは営業とかで業績を伸ばすのが楽しいって思う人もいるだろうし。楽しいことで仕事ができたりとか、生活の中でも大きなウエイトを占めればいいんじゃないかな。

 

――そうなんですね。

 

ただそれを成功と呼ぶかどうかだよね。

 

――ふふふ、でもわたしの中でそれは成功です。

 

だから部活動とかでそういう経験をしてる人はいるんじゃないかな。そのスポーツが好きとか、その楽器を演奏するのが好きとか、楽しんでいる…。

 

――確かに部活熱中してる人の方が受験勉強の時に一気にガーってなったりしますよね。

 

うんうん。

 

――確かにハツラツしてる感じはある。

 

だからスポーツへの情熱を勉強の方に持っていく、意外とシフトがしやすいのはどうしたら頑張って楽しむことができるかっていうね。たぶん頑張るのと楽しむのっていうのがセットにならないと頑張れないので、それができるようになる。だからスポーツなんかをやるのはそのコツがわかるんじゃないかな。

 

――なるほど。

 

やったことがない人はそのコツがつかめなくて、苦痛なだけですべてが終わってるんじゃないかな。

 

一同:あははははは

 

――まあそんな感じはします。

 

勉強も嫌々やってたと。スポーツも嫌々だと。すべて嫌々で、ずっと嫌々だと人生も嫌々になっちゃうんじゃないかなと思うんだよね。だからそういう意味では大変だけど、その先に楽しいと経験できたりとか、大変だけど楽しくできるかっていうのがわかれば。金銭的とか社会的とかでは成功しないかもしれないけど人生としては成功なんじゃないかな。

 

――ありがとうございます。

――先生は学生時代部活とかやってたんですか?

 

学生とはいつ…

 

――いつでも!中!高!

 

中学のときはバレー部に。

 

――へえ~~

 

バレー部ではセッターをやってたんだ。

 

――セッター。トス上げる?

 

そう、トス上げる。だけどあんまり身長がなかったので高校に行ってもバレーを続けるのはちょっと、ね。それで高校は卓球に入ったんだけど。でもじきに辞めて。

 

――え~~(笑)

 

そのあとはね、化学部に入ってた。

 

――あ~~

――バケガク?

 

化学部!

 

――ああそういうことか。

 

化学薬品をこう混ぜたりとか…

 

――なるほど。

――爆発させたりとかは…するんですか?

 

同じ学年で爆発させた人はいる。そして大学は早稲田なんだけど。スポーツなんて無理なんだよね。

 

――みんなプロになったりする人達だから。

 

そうそう!もうスポーツはできないから。

 

一同:あははっはは

 

そう、で、絵画!

 

――ああ~いいですね。

 

ただやってみたら自分がそんなに絵がうまくないってことに気づいて

 

――あはは

 

それでもっぱら鑑賞する方に。

 

――あ~~

 

さっきの話でいくと、あんまり部活動では楽しむところまでいってないかもしれない。

 

――ただ美術関係だと結構こだわり出て面白そうな感じなんですけど…

 

いや本当にうまく描けないですよ!

 

――あはは

――いやでも見る方でもなんでも!

 

見る方はね!見る方は面白くって。大学時代に美術の歴史を学んだりして。大学で非常勤で教えてるときに、多摩美術大学で造形心理学を教えたことがある。

 

――そういう学問があるんですね。どんなことを教えるんですか、造形心理学って。

 

物がどう見えるのかっていう話で。そこに、造形心理学のテキストがあって。これをテキストに使ったんだけどね。知覚の心理学や認知心理学っぽい話。それからあとは臨床っぽいもので絵を描いたりする。美術大学の学生だったんで、描画法とかで絵を描いたり、コラージュをつくったり。彼らの話で、あ、話それるんだけど、コラージュはハマるんだよね。

 

――あ~~。

 

すごくいいナイフとか持っててね、すごく集中してやって。あとは描画で人物を描いたりするとうまいんだけど、終わった後に感想を聞くと、すごい面白かったって言うのね。どうして面白かったっていうと大学に入るまで、あるいは大学に入ってからも、彼らは絵を描いたり、コラージュをつくることは勉強や仕事になるので、あるときからどう描いたら人から高い評価を受けるかっていうのでずっと絵を描いてきたと。

 

――うんうん。

 

つまりうまく描くとか、なるべく高い点数が取れるようにという風に描いてきたんだけど。十年ぶりに、人から上手い下手を評価されないで描いたり、コラージュ作ることができて、自分はそういうことがするのが本当は好きだったんだっていうのに改めて気づいたといった感想をもらって面白いなと思ったね。小学校の頃から彼らはやっぱり絵がうまいし、好きな人が多いけれども、、ある時から美術系の大学にいこうと思うと高い点数を取れるような、合格するような絵を描くことをどうしてもトレーニングしないとなかなか受からないんだよね。で、いつしか絵を描くことが苦痛ではないだろうけど。

 

――楽しみじゃなくなっていた?

 

うん。楽しみじゃなくなってきたっていうので。そのときに、久しぶりに楽しかったみたいなことを聞いて、ああ、そうなんだって。面白いなって。

 

――へえ…。

 

確かに受験とか勉強することが競い合いになって、いい点数を取るとかになったんだけど、さっきの話に戻ると、純粋に楽しいって思えるところがあると思うんだよね。だから心理学のレポートを書くのが苦痛だとか、たぶんそれは間違っているんじゃないかなってね。あるいはテストで合格しなきゃいけないっていうのは、変っていうかね。学ぶことが自体が楽しくないと。

 

――確かに。

 

基本的には僕は勉強は楽しいものだと思うんですよね。なかなかそうはいかないんだけどね。

 

一同:あははははは

 

そんなこと言うて、変な人だと思われる。

 

――中学のときはすごい勉強好きでした。

 

うん。それは中学でなんで好きだったのかってね。先生から褒められて好きっていうのもあると思うし、勉強自体が面白いとかね。

 

――うん。

 

面白い方がいいと思うんだよね。さっきも言ったけど仕事もつまんないと思ったらね。

 

――そうですね。

 

お金のためにっていうかね。

 

――バイトもそうですよね。

――確かに!つらいよ!

 

それ自体を楽しくないと。やっぱり人生はプロセスだからね。結果ではないので。プロセス自体楽しまないといけないんじゃないかな。そういう意味ではあんまり楽しくない人もいる感じはする。

 

一同:ははは



特殊な状況の中で、人間がどういうことをやっているのかっていうのを見ることができたっていうのは非常に面白いことだと思います。

 

――今日はよろしくお願いします。まず最初の質問なんですが先生が心理職をやられていて、心理職ならではの楽しかったことや面白かったこと、これまでの発見は何かございますか。

 

心理職として…面白かったこと…。いろいろな分野で心理学が使われるけれども、日ごろなかなか接することの出来ない人たちと、接することができるとか、話を聞くことができることは面白いことだと思うんですよね。

 

――はい

 

例えば僕は大学の学部を出て、そのあと大学院の修士課程に進み、そこで実験心理学をやっていたんだけど、修了後、鑑別という業務をする中で心理職の公務員になって少年鑑別所とかに行ったりして、そこで非行少年や犯罪者の人たちから話を聞くことができた。これはやっぱり普通の仕事だとなかなかできないことだなと思ったんですね。心理職だっていうと、(クライエントが)話してくれたりもするので。そのあと、また大学に戻って研究をするんだけれども、いろいろ研究をしていく中で、今度は犯罪者ではなく、もしかしたら犯罪をやってないかもしれない、冤罪の可能性のある人たちの供述の分析をするようになって、今度は、冤罪が疑われる人と話をするとか、あるいはその人たちが取り調べの場面でどういうやり取りをしていたのかを供述調書や取調べの録音記録を見ることができて、やっぱりこれも普通ではなかなかそういう機会はないですよね。犯罪者もそうだし、冤罪を疑われた人もそうだけれども、人間がある極限っていうのかな…特殊な状況の中で、人間がどういうことをやっているのかを見ることができるっていうのは非常に興味深いことだと思います。

 

――はい、ありがとうございます。話は変わるんですけどもう一つの質問です。先生自身の特殊なこだわりは何かございますか。癖とか…何か…

 

これは研究とか関係なく?

 

――関係なくです!癖になるということはパーソナルな部分に関係するのかなって思って考えたんですけど…ざっくりな質問になってしまいますが…

 

こだわり…こだわりっていうといろいろすべてのことにあるっていうよりも、自分が関心があることにこだわりがあるっていうか…それを突き詰めるってほどでもないけれども、なるべくいろいろ考えて楽しむっていうことはしているのかなとは思います。

 

――なるほど。

 

それは辛いことよりも楽しいこと。例えば楽しい旅行をしようと、旅行についていろいろ考えるとか。美味しいものを食べたいなって思うと、美味しいといわれるものをいろいろ調べてみたり、もっとこういうのが美味しいんではないかと考えたりね。こだわりといえばこだわりかな。

 

――そこは結構みんなこだわるところですよね!

 

たぶん桁違いではないけれども、普通の人よりもかなりこだわってるかもしれないよね。そういえばお二人は何かこだわってることは…?

 

――僕のこだわりは本当に人と会話するときとか、初めて会話するときとか。僕のこだわりというか人生のテーマの中で同性に嫌われたら終わりだと思っています。

――うふふ

 

うんうん

 

――同性に嫌われる人って異性に好かれないなって僕は思ってて、すごく男の子に優しくしちゃうんですよ。だから本当にちょっとこっちなんじゃないかって思われるくらい女子と男子に対して僕は結構関わるときに差があると思います。癖なんですかね。いつのまにかもう優しくしちゃおうって思っちゃうんですよね。なんなんでしょうね。

――え~なんだろうわたしは…こだわり…ん~~~~。

――いっぱいありそうだけどね(笑)

 

あはははは。

 

――え~~~何だろう。あ、でも心理学に全く関係ないんですけど、全然関係ないんですけど…朝は絶対にごはんじゃないと嫌だ。

 

それはこだわりだねえ(笑)

 

――THE?こだわりだねそれは。パンみたいな見た目してるんですけどね。

――パンちょっと苦手なんです。朝はご飯じゃないとシャキッとしない。

――…わかる

――ちょっとくだらないかな?大丈夫かな?

 

あっははは。

 

――いやこだわりですよ、それも。

――そんな感じです。