2020年6月アーカイブ

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 前回の配信から時間があいてしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 千葉県では休業要請が全面解除されましたね。アルバイトが再開した学生さんも多いことでしょう。

 新型コロナウィルスの流行はいったんおさまりましたが、新しい生活様式にそって過ごす毎日は、これまでの日常とはやはり異なる部分が数多くありますね。久しぶりに自由な外出が可能な生活を楽しみつつも、第二波?第三波の襲来を不安に思いながら毎日を過ごす人は少なくないのではないでしょうか。大学ではオンライン授業がまだ続いていますが、一部で対面授業も開始されます。これまで通り、とはいきませんが、友だちや先生に久しぶりに会い、キャンパスの空気を吸うことで、少しでも皆さんの気持ちが明るくなればうれしいです。

  実践心理学科ではコロナ禍においてもみなさんが健やかな心を保つことができるよう、何回かにわけて専門的な情報発信をしてきましたが、今日でいったん連載を終了します。最後にみなさんと考えるのは、「幸福」についてです。

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 ふだんはあまり意識していませんが、私たちは幸福の前提として「健康」と「仲間」を想定しています。ここでいう健康とは、単に病気でない状態を意味しません。世界保健機関(WHO)は健康とは単に病気でないだけではなく、自分のありのまま(well-being)を大切な価値と認められることであると定義しています。

 つまり、幸福とは身体が健康であることだけでなく、今の自分のありのままを幸福と意識できる心理と、お互い認め合うことで自己効力感を感じられるような人間関係を必要とするのです。

  生活場面で出来ること(能力)と、実際していることのずれを修正する作業は自己実現ともいえるのですが、コロナ禍、そしてアフターコロナの新しい行動様式の実施によって生じる制限は、自己実現の困難を感じる被災体験でもあります。このようなときには、これまでにお話ししてきた通り、自分の対処能力を意識的にくみたてることや、人とつながることが有効です。

  ただし、何事もほどほどにという考え方は大切です。

  • 完璧?自律などの高い理想に囚われて、逆に不安?孤独?絶望に陥っていないでしょうか?
  • 孤立を恐れるあまり、自分をないがしろにしていませんか?孤立しない人間関係を願う気持と、自分を大切にする時間のバランスは取れているでしょうか?
  • 自分からすすんで忙しさに身を任せ、じっくり考えることを後回しにしていないでしょうか?
  • 自分にとって何が大事で、何には手を抜けるか、優先順位をつけられるでしょうか?
  • 病んだ心は自己決定の裏返しの孤独からも生まれます。努力してもできないことはあります。あきらめは時には健康的ともいえるのです。

 自分を追い詰めることなく上手に育てつつ、ときには周囲に支援を求め、ときには周囲を支援して、心地よく他の人とつながれるといいですね。

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 自粛生活が終わりを告げ、久しぶりに外出して友だちと会う人もいるでしょう。でも、しばらく会っていなかったことで、なんとなくぎくしゃくしてしまうこともあるかもしれません。一方で、オンラインでの勉強は学期末が近づき、自分のこれまでの学びの成果を不安に思っている人も少なくないことと思います。

  淑徳大学では、学生のみなさんの困りごとに対応できるように、さまざまな窓口や制度を充実させています。たとえ自分に落ち度があるような問題だったとしても、困っているのであれば遠慮しないで先生や学生相談室、学生サポートセンターの人に声をかけてみてください。一緒に解決のしかたを考えましょう。

  淑徳大生ではない皆さんも、日常生活を取り戻す中で、大変だったこの期間を時には思い出しながら、毎日の幸福を大事にしていってください。

  それではまたどこかでお会いしましょう。

千葉キャンパスの静けさに想う

社会福祉学科 柏女霊峰 2020.6.4

新型コロナウィルス感染症への対応として、淑徳大学千葉キャンパスが原則、入構禁止とされて3か月が過ぎました。

私は週1回ないし10日に1回ほど千葉キャンパスに来ていますが、主役の学生たちがいないキャンパスは閑散としてどこか寂しそうです。

キャンパスでは、前期対面授業の準備も検討されています。早く、学生たちが戻ってこられるよう祈っています。

 

 千葉キャンパスには、開学50周年を記念して淑徳大学歌碑が建てられました。

大学歌1番の末尾に、「天地の恩に/覚むる時/誰れか奉仕を/思わざる」というフレーズがあります。

淑徳大学の建学の理念は、「感恩奉仕」(天地の恩)と「菩薩道」(奉仕)です。

これは、「生かされていることに感謝し(感恩)、自分の与えられたいのちを他者にお返しする(奉仕)ことです。

つまり、自分の尊いいのちを自他の自己実現に向けて燃焼させることが『自利利他』になります」(Together.No.211[2016.4. p.7])と理解されます。

 新型コロナウィルスとの闘い、自粛生活のなかで、自ら生かされているいのちと向き合うことで、自分が本当に大切にすべきことが見えてくるのかもしれません。

今は静かなキャンパスに、学生たちの、新しいいのちのざわめきがこだますることを願っています。

 写真

取得大学南門淑徳大学南門

南門のタブノキ南門のタブノキ

研究棟前から15号館を臨む研究棟前から15号館を臨む

大学歌と善財童子大学歌碑と善財童子


歌碑のアップ歌碑のアップ

淑水記念館淑水記念館

 

 

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 新型コロナウィルスの騒ぎで混乱している間に、もう6月。暑い日も増えてきましたね。淑徳大学のオンライン授業は第7週を迎えました。学生のみなさんはだいぶ慣れてきた頃でしょうか。なんとなく感じをつかめてきたのであれば喜ばしいことです。一方で、疲れてきちゃった、という人もいるでしょう。疲れたを通り越して、もう全くやる気がでないという人も、ひょっとしたらいるかもしれません。今日は、心理学からわかる「やる気を出すコツ」をいくつか紹介していきましょう。対面授業がはじまっても、使うことができますよ。 

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回避型を避け、意識して適切なコーピングを

 たくさんの課題をストレス源ととらえるのであれば、ストレスへの対処であるコーピングの知見をあてはめることができます。不安が続くと、過食やゲーム、ギャンブルなど、くりかえすことが簡単なものを無自覚に選ぶようになりがちですが、(2)の記事でもお話した通り、こうした回避型のコーピングは無気力や絶望感につながる危険をはらんでいます。

  たとえばゲームをするときには制限時間を設け、その時間が来たらいったんスマホから離れるクセをつけるなど、注意深く自己コントロールをしましょう。そして、できる範囲で体を動かしたり、誰かとおしゃべりをしたり、気持ちを整理したりといった、ストレス軽減につながる適切なコーピングをとり、上手に気晴らしをしましょう。

『これをやるぞ!』ではなく『こうしたら、これをやるぞ!』と考える

 目標達成の研究では、何かをしようと思う心の働きを意図と呼んでいます。そして最近では、意図を目標意図と実行意図に分ける考え方が提唱されています。目標意図とは、「~をするぞ」と決心することを指します。新年や新学期に目標意図を形成する人も多いでしょう(しかし、うまくいかないことも多いのは?)。一方で、「~をしたら、~をするぞ」という形(if-thenルールといいます)で形成する意図が実行意図です。この実行意図こそが、目標達成を後押しすることがわかっています。

 授業課題にとりかかろうとするとき、ただ「課題をやるぞ!」と考えるのではなくて、「この動画が終わったら、ノートを用意して資料を読みはじめるぞ!」のように、課題にとりかかるきっかけと、その後に行う具体的な行動を意識しましょう。実行意図を形成しておくことで、きっかけが生じると同時に、頭が自動的に課題にむき、行動が生じやすくなります。

 バーンアウトに注意!

 バーンアウトは燃え尽き症候群とも呼ばれています。高いモチベーションをもって何かをすることを「〇〇に燃える」と表現することがありますが、バーンアウトはその情熱の炎が燃え尽きてしまうような状態です。具体的な症状として、以下の3つが指摘されています。

  • 情緒的消耗感:心も体も、もう疲れきってしまったと感じること
  • 個人的達成感の低下:課題が提出できても「やったぞ!」と思うことができず、「こんなことしても意味ないのにな」、などと思うこと
  • クライアントへの否定的態度:相手に対して敵意を覚えたり、相手をモノのように取り扱ったりすること。※バーンアウトはもともと看護師の間で報告された症状で、クライアントは患者のことを指しています。学生をバーンアウトの主体と考えるときにはクライアントは該当者がいないとも言えますが、課題を出した先生に敵意を抱いたりすることはあるかもしれません。

  こうした兆候が自分に見られたら要注意。完全に燃え尽きる前に、休みをとって回復に努めたり、やることに優先順位をつけたりして、バーンアウトの深刻化を防ぎましょう。バーンアウトになりかけるということは、それまでとてもがんばってきたということでもあるのです。

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  一人で大学の授業にむきあうことは、簡単なことではありません。でも、みなさんと同じように、自宅でがんばって授業課題にとりくんでいる人たちがたくさんいます。みんな『自分はちゃんとできているかな?』とか『なかなかうまくできないなあ』とか『もう疲れちゃったよ』と思いながら、それでも毎日課題にむきあっています。ここでがんばった経験は、自己効力感を高め、くじけない心を作ってくれます。追い込み過ぎは禁物ですが、ちょっとだけがんばって、そして、がんばれた自分を存分にほめてあげてください。

  対面授業がはじまったら、どれだけ大変だったか、という共通の話題で同級生や先輩?後輩と盛り上がることもできるでしょう。必ずやってくるその日を楽しみにして、姿が見えなくても必ずいる仲間と一緒に、時には先生も頼りながら、課題にとりくんでみてください。