実践心理学科:精神医学についての紹介

前回、メンタルヘルスリテラシー(生きる力)を保つための姿勢や皆さんへの願いを話しますと予告しました。

メンタルヘルスリテラシーというと眠くなりそうですよね。

分かりやすく、言います。

 

私は大学に入る方へ、伝えたいことがあります。

社会人として生き続けるためには、ハードルがあります。

それに気付いて下さい。

社会に出るまでに自分には課題があることを知って、それを解決して欲しいのです。

 

 

「三猿」ってご存じですか。

修学旅行で行く日光東照宮神厩の彫刻です。

「見ざる?言わざる?聞かざる」をの三猿です。

 

 

 

 

子供の教育とは、子どもが悪い事を見たり、言ったり、聞いたりしないように育てなさいという比喩を字が読めない人でも分かるように彫ったと言われています。

 

でも、この20年、日本の実態は大きく変わったと思います。

 

私があれって思う学生さん達の特徴は「嫌な奴とはつき合わない、嫌なことはしない、嫌なことは考えない」の回避を三猿のようにする人達です。

実は、これは大人になることを回避したまま、大人の社会に特攻をかけるようなまずい生き方だと思います。

 

大学までは、嫌な奴とはつき合わない、嫌なことはしない、嫌なことは考えないというのような回避が出来ます。

でも、社会人になると、回避は使えません。

嫌なお客の相手もしなくてはいけないし、嫌な上司の言うことに従わないといけないし、無理な仕事をしなくてはなりません。

 

 

その時、どうやって生きて行くのでしょうか?

もう、小学校で覚えた回避の方法は効かないのです。

チェンジができないと、我慢するだけです。

働き出して、無理な我慢をすると、3-8年で潰れることになります。

 

 

図のうつ病の年代分布を見て下さい。

 

 

 

 

早い人は20代前半で、遅い人でも30代にはかなりの人が病むことになります。

既に中学や高校で、薬が必要な子どももいます。

 

友だちが持てず、周りに不安を感じ、親しい人が聞くと周りを悪くしか言えないことが特徴です。

それが「回避の三猿」です。

 

 

このことを講義したら、「せめて大学にいる時くらいのんびりさせて欲しい」とリアクションペーパーを出してきた学生がいました。

気持ちは分かるけど、大学まで来たのだから、もう先延ばしは出来ません。

社会人として生き延びる方法を探す場が大学だと知って欲しいのです。 

 

 

答は人それぞれでしょう。

生きることは一人では出来ません。

生きるとは、人と関わって成長していくことです。

新しい仲間を広げることは、単に好きな相手を探すことではありません。

苦手と感じた人や興味のないと思った人とも一緒に居て話をし、知り合ったり、働いたり出来ることです。

そして、その中で自分の想っている自分と他者の目に映る自分の違いに驚きと発見をすることです。

 

 

もう1つ大事なのは、人のいいなりでなく、自分で判断することです。

力を養って下さい。

会社に入ると皆さんのことを使い捨てにして平気な上司がいることがあります。

それは一見、親切という形でもやってきます。

たとえば、大学では文部科学省の指示通りに予習復習をしろと言います。

でも、シラバス通りに1コマあたり3時間の予習復習などをしていたら、サークル活動なんか出来ません。

真面目にやり過ぎて対人経験不足にならないで下さい。

サークル?バイト?ボランティアなどで、他人と関わって下さい。

生の体験を広げることを欲して下さい。

 

それと、人生体験の代わりになる読書をして下さい。

 

そして、皆さん、高校までの自分と違って、自分で判断し、自分を守る新しい自分の物語を語って下さい。

私も語ってます。

 

作家の小川洋子さんが語っているように「生きるとは自分の物語を作ること」です。

そういったことを3?4年のゼミでは一緒にしております。

皆さんの語る自分の物語が卒論です。

ホームページで先輩達の題目をみて下さい。

楽しそうでしょ。

 

 

生きることを愉しむことは大切です。