実践心理学科 川瀬先生へのインタビュー1

「やる気の勉強会」というのを主催させていただいたんです。

 

 

――今日はご協力ありがとうございます。よろしくお願いします。心理職ならではの楽しかったことや、これまでの発見についてお聞きしたいと思います。

 

わたしの研究は児童の内発的発達動機づけという子どものやる気の研究が最初のスタートなんです。小学校を対象に研究をしてきました。学校で研究をするのはとても大変で協力してくれるところが少なかったんです。大体3年間くらい観察を行って、調査をしました。

 

そして私のもう一つの研究の柱に月経の研究があります。児童の二次性徴から大人になっていくまでの発達の研究をしていました。私の時代では小学5年生から二次性徴の授業を初めて行ったんです。養護教員の先生が授業したのを児童たちがどう理解しているかということを調査したんですが、多くの児童は親から話を聞きたいということがわかりました。しかし親は学校側から話していただいて、そのあと子どもに教えてあげたいという食い違いがありました。そこで、保護者を対象に「やる気の勉強会」というのを主催させていただいて、そこで話し合ったんです。そうすると保護者は自分たちは体験的に知っているけれど、子どもにどう教えたらいいのかわからない、あるいは子どもが学校から学んできたものをどのように理解してどのようなことを学んできたのかがわからないということでした。そこで私が提案して、子ども達が学校で授業を受ける前に、保護者達に同じものを先に勉強すると、子どもが聞き間違えていたり中途半端に理解していたりしたところを補足したり、子どもがどのように理解していたのかを理解することができるんじゃないかとういことです。PTAで呼びかけてもらって勉強会をしましょうかということになったんですね。年間6回毎回30人ほどの保護者の方々が集まってくださったんです。わたしも欲が出てきて、来て下さる方は熱心な方なんだけれども、参加するのはほとんどの方が専業主婦で。参加できない皆さんはお勤めをしていらっしゃる方たちなのです。何とかもっと多くの方に広められないかということを私から持ちかけたら、PTAで総会というものがあるんですけれども、自分たちの活動報告を来て下さった保護者の方たちにお話をしましょうと。そうすればもっと多くの保護者の方々に伝わる。そしてもっと保護者の方からも広めていきましょうと欲が出て、活動報告書を全学年に配りましょうとなったんです。保護者の方からもこういう活動で学べたことはよかった、みんなと共有したいと熱心に参加して下さって、会の運営も保護者の方がして下さって、自分が卒業するときに後の引継ぎの方も決めて下さったんです。子どもたちからどんなことが多く疑問に出て、それにどう答えればいいか、それから最後に、低学年用、高学年男子用、高学年女子用、この学校ではこの教材を使ってますということの用紙を作って、全校の児童にクラスを通じて配るということをどんどん保護者の方が進んでやってくださって、研究が実践された時が一番の思い出です。

 

――すごいお話ですね。

 

やっぱり保護者の力ってすごいなって思いました。きちっとマネジメントもできて、学校にも働きかけて。もちろん保護者のお力なんだけれども、養護の先生であったり、校長先生、PTAの会長、PTAの保健部会の方たちの協力があってできたことだと思います。教員たちも一つになって子どもたちの良いことになるならやりましょうと。保護者の方もちゃんと会の後輩を育てて、十何年も続くというのはやっぱりすごいことだなと。良い思い出です。

 

――今でも似たような活動は何かされているんですか?

 

今は飽和状態といいますか。地域全体に広がってくれたんですが。今は学校に入ることがなかなか難しくて、入れたとしても昼間になってしまうので、保護者の方たちが集まれないんです。今は幼稚園のお子さんを持った親を対象に発達相談をやっています。

 

――自分が母親になったときに子どもが成長していく中で、どのように教えていけばよいのか難しいと思うし、興味があります。

 

ええ。月経のことはお母さんたちは経験で知っているわけなんですけれどもね。

 

――そうなんですよね(笑)

 

二次性徴のことなどどういうふうなきっかけで話したらいいか…。茶の間に置いておく本とかを見つけてこられたり、子どもの目に届くところに置いておいて、「これ何?」となったら、それをきっかけにして話題作りをしようとか。

 

――こういう時って父親はどうすればいいんだろうって僕はいつも思うんですけど…。こういうのを男親から言うのって憚(はばか)られるというか…。子どもからしても嫌なのかなって。

 

うんうん。ただここで重要なのは男の子はお父さん。女の子はお母さん。ここで初めて役割ができます。まだ小学生だと男の子でもお母さんと一緒にお風呂に入ってたりするんですけど、そろそろ二次性徴のことから、今度はお父さんが「男はね…」っていう話をしなきゃいけないわけですよね。ですが日本のお父さんは仕事で忙しい方が多いのでなかなかそういうお話ができないんです。そこで男の子の性教育のDVDをお母さんを交えて観て、感想を言いながら教えていくっていうのをやりました。

 

――男の子の場合は勝手に気付くっていうイメージがあります。実際に僕がそうだったので。

 

調査をすると「あれがそうだったのかな」というような感じが多いみたいですね。女の子のように現象的にはっきりしていないので。できればいろんなことをお父さんから聞いていることはとても大事なことですよね。