実践心理学科 川瀬先生へのインタビュー3

 

蓋の表と裏の絵の中に恋の別れが暗示されている。

 

それから二つ目は物へのこだわりはこれなんですけど…。これ硯(すずり)なんですけどね。女性が持つような。

 

――書道の?

 

書道の硯なんです。昔は日常的に使っていたのだと思います。

 

――かわいい!

 

かわいいでしょ?直径は10cmしかないんです。これは骨董品なんですけれど、金額は自分が手が出せそうなもので。これはもう大のお気に入りなんです。墨を使った跡があるから、誰かが使っていたものなんですけれど。これ江戸時代のものなんです。

 

――えっ!?

――すごいですね…。

 

わたしが硯が好きなので、懇意なお店で品物が入荷すると「こういうのはどうですか」って見せて頂いたんですけれども。本当に可愛らしくて素敵ですよね。江戸時代の技術は本当に質が高くて、またこの蒔絵がとても素敵なんですよね。この絵の中に恋の別れを暗示している。職人さんが絵を描くときにただ描くだけでなくて、この中に物語とか思いとかを込めて作っていて。この雁の羽のところなんかもすごい細工なんですよ。本当に細かいんです。私は仕事していてちょっと疲れた時は、こういう美しいものを見ているとほっとするんです。

 

――癒されるんですね。

 

硯をもしかしたら恋人に送ったのかもしれない。「さよなら、だからいつまでも覚えています。お手紙下さい。」という思いで送ったのかなって勝手にストーリーを作りながら。こういうものをコレクションじゃないですけど、手元に置いて…

 

――使ったりはするんですか?

 

中には使ったりもするんですが、これは使わないですね。今のところ使わないでいます。この水滴は銀でできてるんですね。だからある程度裕福な方が使っていたのかなって。

 

――わたしも集めたい。すごく楽しそうです!

 

誰がつくったものか、誰が使ったものかを想像しながら。とても楽しいです。気に入ったものがあると、傍に置きたいなとか癒されるだろうなって。これは一番お気に入りのものです。

 

――細かいですもんね。この月の褪せ方とか。

 

そうそう。

 

――機械じゃないですからね!

 

職人さんが手仕事で筆で描いているんだと思うんですけどね。相当な技術の方がやっているのかななんて思いながらね。勝手に想像するとすごく楽しいです。