ストレス解消、どうしていますか?:実践心理学科からのメッセージ(2)

実践心理学科からのメッセージ(1)はこちら

 

 いよいよ緊急事態宣言の解除が近づいてきましたね。「不要不急の外出は控えてください」と言われてからもうずいぶんたちますが、みなさんは毎日をどのように過ごしていますか?

 2年生以上のみなさんは、大学での授業だけでなく、サークル活動やアルバイトがなくなって、日常の生活習慣に狂いが生じているのではないでしょうか。そして、緊張し、ストレスをためているのでは。いつもであれば友だちとおしゃべりをしたり、運動をして気分転換ができるのに、それもままなりません。

 新入生のみなさんは、高校の友だちとの別れを十分に惜しむこともできず、せっかく始まった大学生活でも、新しい友だちを作る機会をもてないまま、それでもがんばって、毎日の授業課題にとりくんでいることと思います。

 いろいろな不自由なことについて、コロナのせいだからしかたがない、と頭ではわかっていても、やっぱり気持ちはつらいまま。気持ちの整理をつけようにも、誰かに相談することすら難しい毎日です。知らない間に暴飲暴食をしてしまったり、逆に全く食べなくなったり、ゲームやYouTubeの閲覧をついついやりすぎたり、といったことになっているかもしれません。

********************************

 心理学では、ストレスに対応しようと私たちが意識的にとる様々な行動をグループ分けし、それらをコーピング(対処方略)と呼んでいます。コーピングは以下のように分類できます。

  • 問題解決型コーピング:自分がいま抱えている問題に正面から取り組んで解決しようとする対応のしかた。関連情報を集めたり、人に相談するなど。
  • 情動焦点型コーピング:問題によって生じた辛さや嫌な気分をやわらげることを重視した対応のしかた。友達に話したり、外に出したりして整理?発散するなど。
  • 認知的再評価型コーピング:問題に対するとらえかたや見方をポジティブな方向に変えたり、距離をおいたりするなど、問題のとらえかたを変える対応のしかた。ポジティブシンキングなど。
  • 回避型コーピング:問題から目を背けたり、問題が生じていないように対応するしかた。不安なときには生じやすいが、「どうせやってもだめだからやらない(無気力)」や「何かすると、よくない結果になるに決まってる(絶望感)」という気持ちにつながりやすい 。

 このコロナ禍では、問題解決型や情動焦点型、認知的再評価型のコーピングをとることが難しくなっています。その結果、回避型コーピングが増えてしまい、家ですぐにできてくりかえしやすかったり、その場で簡単に楽しめることを無自覚に選び、それに依存してしまう、ということになってしまいがちです。

  では、どうしたらいいのでしょうか。ここでは、自己効力感というキーワードに注目していきましょう。 

 自己効力感というのは、色々なことを自分がある程度うまくやれている、という感覚のことです。これまで日常生活を大きな問題なく過ごしていた人は、その中で知らない間にこの自己効力感を高めることができていました。しかし、コロナ禍では、自分が問題なく生活できているかが明確ではなくなっているために、不安を感じ、自己効力感が得られにくくなっています。

 こうした状況では、嫌なことは見ない/聞かない/しないといった回避的なコーピングが出現しやすくなってきます。上のリストで上げた無気力や絶望感も自然に湧き出やすくなってきていて、本当は色々なことができるはずなのに、それに気づくことができずに委縮しがちになってしまいます。

********************************

 こんなときには、あえて友だちや家族、仲間とのつながりを確かめることが重要になってきます。オンライン上で友だちと連絡をとってみたり、工夫して健康な方法での気分転換に挑戦してみたり、これまで時間がなくてやり残してきたことに取り組んでみるなどして、新しい生活習慣をつくることを意識してみましょう。それらを通じて、失っていた自己効力感が少しずつ戻ってくるでしょう。

 大丈夫。みなさんにはこの大変な状況を乗り越える力が備わっています。時間がたてば、「あの時は大変だったねえ」と、時には笑ってふりかえることもできるでしょう。