幸福ってどんなこと?:実践心理学科からのメッセージ(5)

  • 践心理学科からのメッセージ(1)はこちら
  • 実践心理学科からのメッセージ(2)はこちら
  • 実践心理学科からのメッセージ(3)はこちら
  • 実践心理学科からのメッセージ(4)はこちら

 前回の配信から時間があいてしまいましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 千葉県では休業要請が全面解除されましたね。アルバイトが再開した学生さんも多いことでしょう。

 新型コロナウィルスの流行はいったんおさまりましたが、新しい生活様式にそって過ごす毎日は、これまでの日常とはやはり異なる部分が数多くありますね。久しぶりに自由な外出が可能な生活を楽しみつつも、第二波?第三波の襲来を不安に思いながら毎日を過ごす人は少なくないのではないでしょうか。大学ではオンライン授業がまだ続いていますが、一部で対面授業も開始されます。これまで通り、とはいきませんが、友だちや先生に久しぶりに会い、キャンパスの空気を吸うことで、少しでも皆さんの気持ちが明るくなればうれしいです。

  実践心理学科ではコロナ禍においてもみなさんが健やかな心を保つことができるよう、何回かにわけて専門的な情報発信をしてきましたが、今日でいったん連載を終了します。最後にみなさんと考えるのは、「幸福」についてです。

 ========

 ふだんはあまり意識していませんが、私たちは幸福の前提として「健康」と「仲間」を想定しています。ここでいう健康とは、単に病気でない状態を意味しません。世界保健機関(WHO)は健康とは単に病気でないだけではなく、自分のありのまま(well-being)を大切な価値と認められることであると定義しています。

 つまり、幸福とは身体が健康であることだけでなく、今の自分のありのままを幸福と意識できる心理と、お互い認め合うことで自己効力感を感じられるような人間関係を必要とするのです。

  生活場面で出来ること(能力)と、実際していることのずれを修正する作業は自己実現ともいえるのですが、コロナ禍、そしてアフターコロナの新しい行動様式の実施によって生じる制限は、自己実現の困難を感じる被災体験でもあります。このようなときには、これまでにお話ししてきた通り、自分の対処能力を意識的にくみたてることや、人とつながることが有効です。

  ただし、何事もほどほどにという考え方は大切です。

  • 完璧?自律などの高い理想に囚われて、逆に不安?孤独?絶望に陥っていないでしょうか?
  • 孤立を恐れるあまり、自分をないがしろにしていませんか?孤立しない人間関係を願う気持と、自分を大切にする時間のバランスは取れているでしょうか?
  • 自分からすすんで忙しさに身を任せ、じっくり考えることを後回しにしていないでしょうか?
  • 自分にとって何が大事で、何には手を抜けるか、優先順位をつけられるでしょうか?
  • 病んだ心は自己決定の裏返しの孤独からも生まれます。努力してもできないことはあります。あきらめは時には健康的ともいえるのです。

 自分を追い詰めることなく上手に育てつつ、ときには周囲に支援を求め、ときには周囲を支援して、心地よく他の人とつながれるといいですね。

========

 自粛生活が終わりを告げ、久しぶりに外出して友だちと会う人もいるでしょう。でも、しばらく会っていなかったことで、なんとなくぎくしゃくしてしまうこともあるかもしれません。一方で、オンラインでの勉強は学期末が近づき、自分のこれまでの学びの成果を不安に思っている人も少なくないことと思います。

  淑徳大学では、学生のみなさんの困りごとに対応できるように、さまざまな窓口や制度を充実させています。たとえ自分に落ち度があるような問題だったとしても、困っているのであれば遠慮しないで先生や学生相談室、学生サポートセンターの人に声をかけてみてください。一緒に解決のしかたを考えましょう。

  淑徳大生ではない皆さんも、日常生活を取り戻す中で、大変だったこの期間を時には思い出しながら、毎日の幸福を大事にしていってください。

  それではまたどこかでお会いしましょう。